概要
EDINETに提出されておられた報告書にはPDFとXBRLの形式があります。
ですが、有価証券報告書は監査対象になっておりますが、そのXBRLデータは監査の対象には含まれていません。
上記の理由を含め、XBRLを利用し、開発を進めるところ、PDFとXBRLの内容が少し違う場合があることがわかりました。
本文はその監査対象外になる法的根拠、現時点までの違うところをまとめで記載させていただきました。
監査対象になる書類は何?
EDINETへの提出書類
関連法令
企業内容等の開示に関する内閣府令
金融商品取引法に基づき、企業内容の適正な開示を目的として、有価証券届出書や有価証券報告書などの開示書類の様式、記載内容、提出方法、公衆への縦覧等に関する詳細を定めたものです。
主な開示書類
- 有価証券通知書
- 有価証券届出書
- 有価証券報告書
- 半期報告書
- 臨時報告書
- 自己株券買付状況報告書
- 親会社等状況報告書
- 外国会社報告書
- 発行登録書
- 発行登録追補書類
- 発行登録通知書
- 目論見書(記載内容や交付について規定)
監査対象
関連法令
金融商品取引法第百九十三条の二に下記の記述があります。
金融商品取引所に上場されている有価証券の発行会社その他の者で政令で定めるもの(以下この項及び次条において「特定発行者」という。)が、この法律の規定により提出する貸借対照表、損益計算書その他の財務計算に関する書類で内閣府令で定めるもの(第四項及び次条において「財務計算に関する書類」という。)には、その者と特別の利害関係のない公認会計士又は監査法人(特定発行者が公認会計士法第三十四条の三十四の二に規定する上場会社等である場合にあつては、同条の登録を受けた公認会計士又は監査法人に限る。)の監査証明を受けなければならない
対象書類ファイル種別について
結論から言うと、XBRLは監査対象に含まれていません。
EDINETから取得できる書類にはPDF、XBRL、CSV(API version2から新規追加種別)がございますが、全てが監査対象ではございません。
一般的に監査されるのがPDFになります。直接的に「PDFを監査する」と明記された Cabinet Office (内閣府) の文書を見つけるのは難しいですが、監査の対象が財務諸表等の内容であり、XBRLデータ自体は監査の対象ではないことを示唆する公的な文書は存在します。
監査報告書に係るQ&A(実務ガイダンス) (日本公認会計士協会 (JICPA)取得先)
上記PDF 98ページ目に以下の内容が記載されております。
XBRLデータは監査の対象には含まれていません。
この記述から、EDINETで提出されるXBRLデータそのものは、監査人が監査意見を表明する直接的な対象ではないことがわかります。監査は、有価証券報告書に含まれる財務諸表等、すなわち人間が読み取れる形式で表示された情報に対して実施され、監査報告書もその内容に対して表明されます。EDINETにおけるXBRLデータは、その情報を電子的に構造化し、利用者が分析等に活用するための形式として位置づけられています。
上記によって、XBRLには人間的ミスを発生したり、PDFとズレることがあり得るので、各種違いを下記に整理いたします。
PDFとXBRLの差
PDFにはあるがXBRLにはない連結財務諸表
米国会計基準(US GAAP)を採用している会社
- 対象会社: 米国会計基準(US GAAP)を採用している会社。
- 対象書類: 日本のEDINETシステムを通じて提出される有価証券報告書。
- 発生現象: 提出された有価証券報告書のPDFファイルには連結財務諸表が適切に記載されている一方で、関連するXBRLファイルには連結財務諸表が含まれていない。
- 考えられる原因: 当該会社が会計基準として、日本の会計基準やIFRSではなくUS GAAPを適用しているため。US GAAPに基づく正規の財務情報開示は、主に米国証券取引委員会(SEC)のEDGARシステムで行われ、その際にXBRLデータが作成されます。日本のEDINET提出においては、US GAAP採用会社の場合、PDF形式の有価証券報告書本体で財務諸表を開示し、XBRLデータについてはEDGARで提出されたものを参照する運用になっている、あるいはEDINETのXBRLタクソノミ(XBRLデータの構造定義)がUS GAAPの詳細な財務諸表構造に完全には対応していない、あるいはEDINET上でのUS GAAP財務諸表XBRLの提出方法がJapan GAAPやIFRSとは異なるため、PDFとは別にXBRLでの詳細な財務諸表が含まれていない可能性があります。
米国会計基準(US GAAP)を適用する会社が日本のEDINETに提出する有価証券報告書において、PDF形式の本文には連結財務諸表が掲載されているにも関わらず、付随するXBRLデータに連結財務諸表が含まれていないという現象が見られます。この背景には、これらの会社がUS GAAPに準拠した公式なXBRLファイリングを米国のEDGARシステムで行っていることが関係しています。そのため、日本のEDINETにおける提出では、PDFでの網羅的な開示とし、XBRLデータに関してはEDGAR提出分を参照するか、あるいは日本のEDINETにおけるUS GAAPのXBRLデータ要件がPDFの内容と完全に一致しない運用となっていることが原因と考えられます。利用者がUS GAAPの詳細な連結財務諸表を構造化データで取得したい場合は、EDGARシステムを参照する必要が生じる可能性があります。
会計基準変更に伴う会社
- 対象会社: 会計基準を従来の日本の会計基準(Japan GAAP)から国際会計基準(IFRS)へ変更した会社(ただし、この現象は全ての基準変更会社に発生するわけではなく、個別の会社のシステム対応状況などに依存します)。
例として、日本電気株式会社(NEC)がIFRSへ移行した際の有価証券報告書が挙げられています。 - 対象書類および時期: 会計基準の変更を適用し始めた事業年度以降の有価証券報告書(特に、変更初年度やそれに近い時期のXBRLファイル)。
例として、日本電気株式会社(NEC)の2017年および2018年の有価証券報告書が挙げられています。 2019により、PDFと一致になりました。 - 発生現象: 当該期間の有価証券報告書のPDFファイルには連結財務諸表が適切に記載されているにも関わらず、EDINET上で同時に提出されたXBRLファイルには連結財務諸表のデータが含まれていない。
- 考えられる原因: 会計基準の変更(Japan GAAPからIFRSへの切り替え)が行われた初年度またはその近辺において、EDINET提出用のXBRLデータを作成するシステムやプロセスが、新しい会計基準(IFRS、および関連する日本のXBRLタクソノミであるJPIGPなど)に完全に対応できていなかった、あるいは移行期の特別な処理として、詳細なIFRSに基づく連結財務諸表のXBRL化が見送られたことなどが原因として考えられます。
IFRSなど、会計基準をJapan GAAPから変更した会社が、基準変更適用初年度またはその後の特定の期間にEDINETへ提出した有価証券報告書において、PDFには連結財務諸表が存在するものの、付随するXBRLファイルに当該連結財務諸表が含まれていないという現象が確認されることがあります。これは、会計基準の移行期におけるEDINETのXBRLタクソノミへの対応や、企業側のXBRLデータ作成体制が新しい基準に完全に追いついていないことなどに起因すると考えられます。そのため、特定の期間、特に基準変更直後の有価証券報告書では、XBRLデータだけでは連結財務諸表の詳細な情報を取得できない場合があります。この状況は、会社の対応状況によって異なり、全ての会計基準変更会社に共通するものではありません。
XBRLとPDFのデータ期間比較
- 対象会社: イオン株式会社
- 対象書類および時期: 2021年に提出された有価証券報告書。
- 発生現象: 当該有価証券報告書において、EDINETを通じて提出されたXBRLファイルに、PDF形式の有価証券報告書本文に記載されている期間よりも多い過去の期間データが含まれている。
- 発生原因: この特定の事例において、なぜXBRLファイルにPDFよりも多くの期間データが含まれているかの具体的な原因は不明。一般的な可能性としては、XBRLタクソノミの仕様やシステムの都合により、過去の期間データが自動的に含まれる、あるいは企業側のデータ作成・提出プロセスにおける特定の取り扱いなどが考えられますが、詳細な理由は特定されていません。
イオン株式会社が2021年に提出した有価証券報告書に関する特筆すべき点として、EDINET上のXBRLファイルが、PDF形式の報告書本文に掲載されている財務データの期間を超える、より多くの過去の期間データを保持している現象が確認されています。この現象が発生した具体的な原因については、現時点では明らかではありません。これは、XBRLのデータ構造や提出システムの特性、または提出会社の内部的なデータ管理・作成プロセスなど、複数の要因が関連している可能性が考えられます。
訂正書類のXBRLファイルがPDFと異なり、全データが含まれている
- 対象: EDINETを通じて提出される、すべての会社の全訂正書類(有価証券報告書や四半期報告書などの訂正報告書)。
- 発生現象: 訂正書類のPDFファイルは、通常、原書類からの変更点や訂正された箇所に焦点を当てて表示されますが、XBRLファイルには、訂正内容が反映された訂正後の書類全体の完全なデータが含まれています。
EDINETにおける訂正書類の提出において、PDF形式のファイルとXBRL形式のファイルでは、含まれるデータの範囲に一般的な違いがあります。これは、特定の会社や書類に限らず、すべての会社が提出する全ての訂正書類に共通する基本的な特性です。
具体的には、訂正書類のPDFは、投資家などが変更内容を容易に把握できるよう、訂正箇所やその差分を中心に示されるように作成されることが一般的です。一方、XBRLファイルは機械判読性を目的とした構造化データであり、訂正が正確に反映された最新の状態のデータ全体を提供する必要があります。このため、訂正報告書に係るXBRLファイルには、訂正された部分だけでなく、原書類の訂正されていない部分も含めた、訂正後の書類の完全なデータセットが収録されています。
したがって、訂正書類の内容を網羅的に、かつ構造化データとして利用する際には、XBRLファイルを参照することが不可欠となります。
まとめ
これらの違いは、XBRLデータを利用して情報分析やシステム開発を行う際に留意すべき点です。XBRLデータは多くの利便性を提供しますが、PDFファイルと照合するなど、含まれるデータの範囲や正確性を確認することが重要となります。